22歳の女子大生。中1で兄に麻雀を教わって以降、ネット麻雀『天鳳』で間断なく麻雀を打ち続けている。
幼い頃から兄にベッタリの重度のブラコンで、高校卒業後は兄を追って北海道から東京に上京し、現在まで同棲を続けている。

28歳のフリーター。学生時代に麻雀プロ団体に入ったり、卒業後は大手チェーン雀荘の社員になったりしつつも長続きせず、現在は定職に就かずフラフラしている。
ブラコンの妹を表面上はうっとおしがりつつ内心まんざらでもない隠れシスコン。

はじめに

「ただいま、お兄ちゃん」

「おう、おかえり靖子。『今授業終わりました。打ち合わせがあるので少し帰るのが遅くなります』ってメール来てたけど、打ち合わせって何の話?」

「本を出すことになりました」

「うん? 誰が?」

「私がです。日本文芸社の人が、麻雀の指南本を書いてみないかって……」

「明らかに人選おかしいだろ。『天鳳』で七~九段をループしてる、一般レベルよりちょっと強いだけの素人女子大生に何が書けるって言うんだよ」

「それは向こうも承知してまして、内容は上級者向けではなく、初~中級者向けの内容にして欲しいと言ってました」

「そりゃそうだろうな。上級レベルの麻雀を打ってないのに上級者向けの本を書くとか無茶振りすぎる」

「今日の打ち合わせでは、誰を対象にどういう感じの本にするのかを話し合いました。目指す方向としては、

『ルールも点数計算も覚えた。スジもワンチャンスも知ってる。じゃあ次は何をすればいいの?』ぐらいの段階の人を対象に、今の自分の麻雀に行き詰まりを感じてる人が、『今より少しだけ強くなる』ための思考・戦術を紹介する。

――こんな感じです。このテーマを、高いアクセス数を誇る人気麻雀ブログ『ブラコンJDの天鳳反省帳』を書いている、天鳳界隈の有名人の西園寺靖子さんであれば、わかりやすくかつ面白く書けるのではないか、と、担当の人にめっちゃ持ち上げられました」

「人気麻雀ブログ(笑)天鳳界隈の有名人(笑)」

「(笑)を付けないでください!」

「悪い悪い。で、おだてに弱い靖子さん(有名人)のことだから、ホイホイ依頼も受けちゃったんだろ?」

「…………その通りです」

「まあ頑張ってくれたまえよ。俺も靖子の兄として陰ながら応援しているよ」

「いえ、陰ながらじゃ困ります。担当の人に、『ブログと同じように兄妹での会話形式で行きましょう!そっちの方が絶対にわかりやすくなりますから!』と言われたので、お兄ちゃんには表立って協力してもらわざるを得ません」

「ちょっ、何で打ち合わせに参加してない俺の参加が決定してんだよ!?」

「お兄ちゃんは私に手取り足取り腰取り麻雀を教えてくれた師匠的存在ですから、弟子のピンチの際は助けに来る義務があると思います」

「少なくとも腰は取ってねえよ!」

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